年収を相談するなら、内定条件が届いたら早めに内訳を確かめ、承諾の返事をする前に希望を伝えましょう。選考中に希望額を聞かれた場合も、現年収と希望する条件を説明できるよう準備しておきます。
準備するのは、現年収が分かる資料と、提示条件の書面です。基本給・賞与・固定残業代を分けて見れば、希望額との差がどこにあるのか、何を質問すればよいのかが整理できます。
年収を相談する前の準備
- 提示年収を基本給・賞与・手当・固定残業代に分けて確認する
- 現年収、希望額、最低限必要な条件をメモする
- 経験や担当範囲など、希望額の理由を説明できるようにする
- 承諾前に相談し、回答が間に合うかも確認する
まず年収の内訳を確認する
「年収〇万円」が、毎月の給与だけで計算された額なのか、賞与や残業代の見込みを含む額なのかを確認します。同じ年収でも、毎月受け取る額や初年度の賞与は変わります。
| 項目 | 聞くこと |
|---|---|
| 基本給・手当 | 毎月の金額。手当の支給条件 |
| 固定残業代 | 何時間分でいくらか。超えた分の支払い |
| 賞与 | 年収に含むか。見込額と支給条件、初年度の扱い |
| 昇給 | 見直す時期と評価の仕組み |
| 一時金 | 支給時期と、短期間で退職した場合などの返還条件 |
書面に賞与の記載がなくても、賞与がないとは限りません。採用担当者へ内訳を尋ね、回答をメールなどで残しましょう。
求人票と提示額が違うときに聞くこと
求人票が「年収450万〜650万円」で提示が480万円なら、金額は記載された範囲内です。希望より低いことと、求人条件が変更されたことは分けて考えます。まず、経験や担当業務をどのように評価して今回の額になったのかを尋ねましょう。
求人票の条件を変更して契約する場合、会社には変更内容を明示する義務があります。求人票と提示された条件を並べ、「この違いは何によるものですか」と確認しましょう。希望する金額の相談と、条件の変更理由の確認を分けると伝えやすくなります。
「今回の提示額は、どの経験や担当範囲を前提にしたものですか」と尋ねると、相談の材料を整理できます。求人票の上限が自分に提示されるとは限りません。同じ職種・地域の求人や自分の実績も用意し、希望額の理由を伝えましょう。
転職しても年収が必ず上がるわけではない
厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、前職が雇用者で調査時にも在籍していた転職入職者のうち、賃金が前職より増えた人は40.5%、変わらない人は28.4%、減った人は29.4%でした。自営業からの転職は含まず、交渉の成功率を示す数字でもありません。
自分の希望額は統計の割合から決めず、実際の提示条件、担当業務、これまでの実績、生活に必要な金額をもとに考えましょう。
年収交渉は、条件提示後から承諾前に相談する
具体的な提示額を相談しやすいのは、条件が届いてから承諾を返すまでです。選考中に希望を聞かれたら回答し、採用条件を受け取った後に、希望と異なる点をまとめて確認しましょう。
| 段階 | 条件の話 | この段階ですること |
|---|---|---|
| 書類選考〜一次面接 | 質問されたら希望を伝える | 職務経歴と実績を具体化して伝える |
| 二次〜最終面接 | 聞かれたら答える | 現年収の実額と希望レンジを用意しておく |
| 内定条件の提示 | 内訳と希望額を相談する | 書面の内訳を確認し、根拠を添えて希望を伝える |
| 承諾の返事の後 | 承諾後の変更は改めて相談が必要 | 入社日や引き継ぎの調整に移る |
面接で「希望年収は」と聞かれたら数字で答えます。「御社の規定に従います」だけで終えると、判断材料が相手側にしか残りません。面接全体の受け答えは転職面接の想定質問50選|答え方のポイントと自己紹介・転職理由の例文にまとめています。
伝え方の5つのコツ
1. 現年収の実額と希望レンジをセットで出す
現年収は、源泉徴収票の支払金額など、確認できる資料をもとに伝えます。残業代や一時的な賞与を含む場合は、その内訳も説明しましょう。希望額は「580万〜600万円」のような幅でも、「600万円を希望します」という形でも構いません。あわせて最低限必要な条件を自分の中で決めておきます。
2. 求人条件と自分の実績を根拠にする
同じ職種・地域の求人、今回増える担当業務、これまでの実績を用意します。「担当する店舗が増える」「〇〇の経験を生かせる」など、希望額につながる理由を具体的に伝えましょう。実績の数字は確認できるものだけを使い、会社の機密情報は出さないようにします。
3. 提示額の内訳を先に確認する
基本給の月額、固定残業代の時間数と金額、賞与を含む場合の見込額を確かめます。「賞与込みで〇万円」と「毎月の給与だけで〇万円」では比べる条件が違うためです。初年度の賞与が満額か、手当がいつから支給されるかも質問しましょう。
4. 基本給以外の項目も相談の対象に入れる
基本給は賃金テーブルに紐づくため、等級をまたがない範囲では動かしにくい会社もあります。それでも相談できる項目は残ります。
| 相談する項目 | 相談の内容 | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 基本給 | 毎月の固定的な給与額 | 月額か年額か、固定残業代を含むか |
| 賞与 | 支給条件と見込額 | 支給月数の実績、支給条件、初年度の扱い |
| 昇給 | 入社後の給与見直し | 改定の時期、評価が反映される仕組み |
| 入社時の等級・役職 | 賃金テーブルの適用区分 | 提示額がどの等級を前提にした額か |
| 入社一時金 | 入社時に一度支給される金額 | 支給時期、在籍要件、返還条項の有無 |
| 就業場所・業務の変更の範囲 | 給与以外も含む働き方の条件 | 転勤の範囲、職務が変わりうる範囲 |
5. 要求ではなく相談の形にする
「ご検討いただくことは可能でしょうか」と、希望額と理由を伝えます。入社したい気持ちがあるなら、それも添えましょう。ただし、条件が合わなければ入社できない場合は、譲れない最低条件を曖昧にせず伝えることも大切です。
そのまま使える例文3パターン
パターン1|条件提示の面談・電話で伝える
「内定のご連絡をありがとうございます。御社で働かせていただきたいと考えております。
条件について一点うかがえますでしょうか。ご提示の年収480万円は基本給の積み上げでしょうか。賞与を含んだ想定でしたら、前提の月数も教えていただけますと助かります。
そのうえでのご相談ですが、現職の年収が支払金額で500万円、今回は担当範囲が広がることもあり、530万円から550万円程度でご検討いただくことは可能でしょうか。」
パターン2|転職エージェントに依頼する
「◯◯社から内定をいただきましたが、提示が480万円で、現年収の500万円を下回っています。求人票では450万〜650万円のレンジでしたので、今回の額がどの基準によるものかを確認していただけますでしょうか。
そのうえで、入社一時金を含めない年間の給与条件として、最低500万円、可能であれば530万円以上を希望します。基本給の調整が難しい場合は、適用される等級や賞与の条件についても確認していただけますでしょうか。」
最低限必要な額と希望額に加え、それぞれに賞与・残業代・一時金を含むかも伝えます。入社一時金は一度の支給なので、毎年の年収を維持する条件とは分けて考えましょう。エージェント経由の仕組みは転職エージェントの仕組みと登録前の注意点|転職サイトとの違い・総合型と特化型の使い分けで扱っています。
パターン3|メールで送る
件名:内定条件に関するご相談(氏名)
◯◯株式会社 人事部 ◯◯様
お世話になっております。◯◯です。このたびは内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。条件について二点ご相談させていただきたく、ご連絡いたしました。
一点目は内訳です。ご提示の480万円は賞与を含む金額でしょうか。含む場合は前提となる支給月数もお教えいただけますでしょうか。
二点目は金額です。現職の年収が源泉徴収票の支払金額で500万円であること、今回のポジションでは◯◯まで担当範囲が広がることから、530万円程度でご検討いただくことは可能でしょうか。
貴社で働きたいと考えております。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
メールなら、内訳の質問と金額の相談を並べて残せます。
承諾前に、提示額の内訳と希望を一枚にまとめる
賃金統計は転職した人全体の傾向です。交渉でいくら上がるかを予測する数字としてではなく、提示条件を考える参考に使います。自分の希望額は、担当業務・実績・現在の年収など、説明できる材料に結びつけましょう。
一枚のメモに、提示された基本給・賞与・手当、確認したい点、希望額と理由を並べます。エージェント経由ならそのメモを渡し、直接相談するなら質問を二、三点に絞る。回答期限までに返事をもらえるかも、最初に確かめておきましょう。
よくある質問
- 年収交渉を切り出すのはいつがいいですか
-
提示条件が届いたら早めに内訳を確かめ、承諾の返事をする前に相談しましょう。選考中に希望年収を聞かれたときも、その時点で現年収と希望額を説明します。
- 提示書面に賞与の記載がありません。不備でしょうか
-
記載がないことだけでは判断できません。賞与制度があるか、提示年収に賞与を含むか、初年度の支給条件は何かを採用担当者へ確認し、回答を残しましょう。
- 求人票のレンジより低い額を提示されました。聞いてもいいですか
-
確認して構いません。求人票と条件書の差を示し、変更の理由と今回の評価を尋ねます。そのうえで、希望額と理由を伝えて相談しましょう。
- 入社後に聞いていた条件と違うとわかったらどうなりますか
-
求人票・条件書・メール・給与明細をそろえ、会社へ違う点を確認します。明示された労働条件が実際と異なる場合、直ちに契約を解除できる規定もあります。会社の説明に納得できない場合は、書類を持って労働相談窓口へ相談してください。
承諾する前に、回答を書面で確認しよう
相談で条件が変わったら、基本給・賞与・手当などの内訳を新しい条件書やメールで確認します。希望額に届かなかった場合も、仕事内容、働く場所、勤務時間などと合わせて、入社するかを判断しましょう。
退職の準備は退職を伝える時期と手続き、応募書類は職務経歴書の基本項目と文例を確認できます。
参考・出典
- 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表6 転職入職者の賃金変動状況別割合|www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf
- e-Gov法令検索「労働基準法」第15条(労働条件の明示)|laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第5条|laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
- e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の3・第5条の4|laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
いずれも2026年9月1日時点の内容です。制度・条文は改正されることがあります。個別の労働条件は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーなど公的窓口の案内もご確認ください。

